【刀ミュ】静かの海のパライソ本編の解説です。
まだ見たことない人、見たけど改めて歴史をおさらいしたい人、
刀ミュはあまり知らないけど歴史が好きな人
作品をより深く楽しめるように時代背景の解説を中心に書きました。
刀剣乱舞は好きだし知ってるけど作品全部見たわけじゃないよ、って方いると思うんですがあなたはどんなタイプですか?
特に推しの出ていない舞台はわりと興味薄いですよね?私は以前そんなタイプでした。今はもうどっぷり浸かりきってる…
見たい気持ちはあっても推しの別作品も見なきゃいけないし、積んでるドラマ、本、マンガ、アニメ、仕事も家事も子育ても…と忙しいそこのあなた。
当時の時代背景を知ることでより登場人物や刀剣男士たちのやろうとしている気持ちに近づけるのではないかと思い、調べられる範囲内で調べてまとめてみました。
当然歴史の専門家ではないしここで歴史の研究を論議するつもりもないですが、誰にでも理解できるようにわかりやすい解説を目指したので参考程度に読んでいただけたら幸いです。
なお、刀剣男士たちの考察についてはまだまだ読みが甘い部分もあるかと思いますのであまり深読みはしておりませんので各自の愛と理解に委ねます。
【パライソ】浦島くんと一緒に学ぶ島原の乱の時代背景とあらすじ
俺は浦島虎徹。今回鶴丸国永の采配によって出陣することになったんだけど、この時代について知らない事ばかりだったよ。だから俺と一緒に学ぼうぜ。
僕は松井江。ボクはこの時代島原の乱を見てきたから解説するよ。大変な任務で辛かったけれど。
オーディオコメンタリー風に一緒に本編を見てる感じで話を聞いてもらえたらうれしいな
最悪!悪政として歴史に名を遺した無能すぎる島原藩主、松倉勝家の時代
舞台が始まってすぐなんだか不穏な空気になっているね。この頃はどんな時代だったんだろう。
徳川家康が関ヶ原の戦いに勝利し江戸幕府が成立。幕藩体制の時代。大きな争いはなくなり一応平和な世の中になりつつある。だから大坂の陣はもう過去の時代の話で今回の戦が初陣って人もいたよ。
幕藩体制では藩(今で言う都道府県のようなもの)の統治のやり方は各藩主に任せられていた。
今回の戦の舞台、島原藩(今の長崎県のあたり)藩主松倉重政、勝家親子の時代は領民にとってそれは酷く重い税を課せられて苦しい時代だった。嘘の申告をして4万石しかないのにワシのところは10万石じゃ、と言って石高に見合わない大きく立派な城を建てたり、
え?実際そんなに収穫できる領地はないのに10万石相当の年貢を皆から集めるってことだよね。酷い
納める能力のある無し構わず全員に税を課す、赤ん坊税、老人税、窓税、畳税ほか、なんじゃそりゃ。実質税率9割と言われるよ。納められなかったら拷問する。おまけに飢饉が続いて作物も育たず納めるものがない。それに加えてキリスト教への弾圧。農民らをキリシタン弾圧という名目で余計に厳しく取り締まっていたのだろう。
もうお腹いっぱいになるほど酷い話が続くなぁ。あれ、男の人絵をかいているね。
山田右衛門作(えもさく)。彼は元々南蛮絵師さんでね、絵や文章が得意だったんだ。今回の話の中で重要な人物だよ。一揆側の人物なのになぜ幕府側にいた僕が知ってるかって?それは後で説明するよ。
一揆のリーダー天草四郎死す。歴史改変を阻止する任務は果たして失敗なのか?
辛すぎる生活に耐えられなくなっていた島原・天草地方の領民たちは立ち上がり天草四郎(本名:益田四郎)をリーダーとして擁立、一揆を起こすことにしたのだが、物語序盤で時間遡行軍によって殺されてしまう。
天草四郎!いきなり任務は失敗か?とピンチだったね。鶴丸と日向とオレ浦島の3振りで彼になりきってこの後任務に励んだ!
そうだったね。隊長を鶴丸国永とした第一部隊が到着する前のこと。ほかの隊員は大倶利伽羅、豊前江、日向正宗。
このままでは歴史は変わり任務に失敗ということになってしまう。なんとか歴史改変を阻止しようと殺された四郎の役を鶴丸たちが演じてなりきることに。
でもさ、四郎が何人もいていいのか?と思ったよね。しかも幕府側の人は天草四郎の顔は知らなかったって言うじゃない。どうして天草四郎なの?彼、まだ若かったよね。
天草四郎
現在長崎にある複数の四郎の銅像の顔は全て後年になって想像で作られたもの。彼について伝えられているのは〇年後に救世主が現れるだろうとか、16歳で学識があって賢い、神がかり的な伝説、しかも顔がいい?実際に存在はしたようだが神がかり的な言い伝えはいかにも後付けっぽい。
つまりさ、藁にもすがりたいほどに苦しい生活をしている中でデウス(神)に祈ることは唯一の救いだったし、混乱の世の中には強くて賢いリーダーが必要だったってわけだ。だから四郎自身の意思ではなく、民衆によって作り上げられたリーダー(光)だったんだろうな。
それではったりでもデマカセでも良かったのか。
3人も代役が必要だったわけはこの戦に集まる者の目的や戦意に関係があるね。
まずこの戦には最終的に3万7千人もの民衆を集めなければならない。そして戦の目的は人それぞれ違い
キリシタン弾圧に対する不満、
重すぎる年貢に対する不満、
藩主を失った牢人たちの気持ちの行き場。3振りはそれぞれのアプローチで民を集めることにする。
合言葉は「パライソ」3万人の民衆を集めるために奔走する刀剣男士たち
よくわからないなりにも正義感と純粋な心を持つ浦島は「パライソ!」と声高に人々を集める。集まった民衆の中には親とはぐれたという兄弟がいて、彼らと仲良くなる浦島。
そう。母ちゃんを探してる兄弟がいてね。俺が見つけてやるから!って元気付けたんだよ。
その様子を見て大俱利伽羅はあまり深入りするなと忠告。親しくなって情がわいてしまうとその人の死を目の当たりにした時、辛い思いをすることを自身の経験から知っていたからだ。
おれ、この時は大丈夫って思ってたよ。このときはね。
大俱利伽羅のこの経験談、詳しくは「三百年の子守唄2019」を見てくれ。この話に名前が出てくる石切丸のことも詳しく理解できるようになるよ。
日向正宗はかつて豊臣秀吉が所持し石田三成の手に渡っていたこともあるという属性から、千成ひょうたんの馬印の旗を振りながら「パライソ」と叫ぶ。
馬印(うまじるし)は、戦国時代の戦場において、武将が己の所在を明示するため馬側や本陣で長柄の先に付けた印。
引用元:Wikipedia
するとかつてキリシタン大名で豊臣側についていた有馬晴信ら藩主を失った牢人たちが集まってくる。豊前江はこんなのはったりじゃねえか?と疑心暗鬼。はったりでもなんでも人は光を求めてるっていうんだ。
おれ仲良くなった農民たちに話を聞いたよ。蓑踊りとかさ。ほんとに酷いよ。見たことないけど
蓑踊りは人を生きたまま藁を巻き付けて火あぶり。すると熱くてもがき苦しむ。それを踊りと例えるなんて酷い話だな。
ところでパライソって何?だなんて今更のように俺言ってたな。ははは、とにかく疑いもなくパライソーって叫んでた。
天国に行きたいって皆願ってるんだ
ここでぼくたちは刀剣男士としての存在について少し考えてしまった
鶴丸)単純な暴力を選んでしまった時点で間違いだ。
日向)戦はまちがいか。
豊前)刀は間違いの道具ってわけか。
伽羅)考えるな、今は。
一揆勢の暴走。意にそぐわないやつ、異教徒はやってしまえ
ところで、浦島は仲良し兄弟の兄から意外な話を聞く。弟くんのために母ちゃんを探してやると張り切っていたけれど本当はもう母は死んだと。
死んだわけは一揆に加わらなかったから殺されたのだ、と…
でも兄弟は生きていくために仕方なく一揆に参加してるのだと。
ああ。史実でもそうだったらしいよ。領民の間でも意見は割れていて一揆に参加したくないやつだって当然いる。領民同士で喧嘩したり殺し合ったりもうカオスになってきたな。
一揆勢の暴走は止まらず異教徒を理由に仏教の僧侶をも殺してたのはやりすぎに思えるな
ここで山田右衛門作についての補足。
史実では自ら一気に参加したのではなく、自分の妻子を守るため仕方なく参加したのだとの説。だからこの兄弟の心情は右衛門作のキャラ性にも重ねているのかもしれないと私は思ってます。ということはこの劇中での右衛門作のキャラクターは当時の民衆たちの要素あれこれ詰め込んだ総意なのではないか?とも思っています。
つまり、誰でもいいからリーダーを立てて崇めてパライソ(天国)へいきたい。
地獄のような生活に我慢ならないから一揆を起こそう。
仲間にならないやつは脅してでも引き入れよう!
このような感情の塊が右衛門作の人物像を作り上げているように思えます。
集まった一揆勢に幕府側はどう対応する?実戦を前に迷いが出る浦島・松井
そうこうしているうちに一揆勢は原城に立てこもり3万7千人集まったね。当時廃城となっていた原城。島原半島の崖っぷち。それじゃあやってやるか!と意気込む鶴丸。
でも俺たちいざ始まる本格的な戦を前にひるんでしまったよ。だって殺す相手は人間だよ?それなのに鶴丸は血も涙もないやつみたいに「俺がまず見せてみるから」ってひとりで斬っていっちゃって。
あぁ。ひとりで板倉重昌を討ち取ったね。板倉って?いうなれば小ボスって感じかな。幕府側はまだ甘く見てたんだろう。所詮キリシタンや農民たちの一揆だろって。でも向こうは士気がすごく高まってるしガチで命をかけた戦いだったんだ。
板倉がやられたと聞き、松平信綱はもう本気になった。ラスボスの出番。
いよいよ最終局面。
松平信綱ってラスボスはどんなやつ?
彼は知恵伊豆って呼ばれてたな。徳川家光・家綱らを支えた老中でめちゃめちゃ頭のいい伊豆守だ。知恵が湧くように出てくるから知恵伊豆。NHKの番組にあった知恵泉はこの名にちなんでるそうだよ。とにかくこの頭のいいボスを本気にさせちゃったってことだ。
ここでいよいよ鶴丸は最後の策に出る。それは江の二振りを幕府側につかせること。
これには正直参ったよ。幕府側には僕のかつての主、松井興長がいる。つまり刀の時代にたくさんのキリシタンたちを斬った史実とまた向き合うことになるんだ。
そうか。松井がいつも血を流し流され…なんて病んだこというのはこの時の記憶がトラウマだったんだね
それを知って豊前江は鶴丸に「あんた、なんてことさせるんだ!」と怒るかと思ったら・・・
豊前)いつかは向き合わなきゃならねえんだよな。辛いけど。でも今回はオレがついてるからさ。鶴丸、ありがとよ。
って逆に感謝してたっけ。本当にどちらも男気のあるリーダーだよ。
月夜がきれいなある夜、海の傍で鶴丸と大俱利伽羅は語り合う。
月には海があるらしい、静かの海。驚きも争いもない退屈な海。いつか行ってみたいな。
ここでようやくタイトル回収ですね。
鶴丸は自分が常に人々の争いに巻き込まれ驚きに満ちた記憶のせいで驚きを好む性質になってしまった(はず)。だから本当は退屈なくらい静かに暮らせる世界に行ってみたい、というセリフは自分の境遇とは真逆で深い意味を感じますね。鶴丸と大俱利伽羅のハモリの歌がとても美しいシーンです。
そして子どもも女も関係なしに参加させられたこの戦、あの兄弟も戦います。石を投げる戦法で。
兄弟の兄が両手に刀を持ってるおかしな男に石投げてやっつけたんだよ、と鶴丸に嬉しそうに弟が話をするんだけど有名なの?
このおかしな男とは、宮本武蔵のことなんだって。二刀流。60戦無敗の男として知られていたけれど、この島原の乱で石に当たり負傷したという記録が残ってるそうだ。
そして幕府側からの矢文が届く。
転べ。さもなくば、なで斬りだ
転ぶ?なでぎり?これは俺もう知ってるよ。
劇中でも説明されたけど、転ぶは改宗すること。つまりキリスト教やめろって言ってる。そしてなで斬りは皆殺し。何度聞いてもやっぱり残酷で悔しくて怒りで震えるよ。
右衛門作がもう降参しようっていうけど史実どおり彼だけは生き残らなければならない。この描き方は辛すぎですね。
幕府側に寝返って内通者(スパイ)のようなことをしてたことになる。先にも言ったとおり自分の家族の命を守るためにやった行為。彼は本当は鶴丸にこの話をしようとしたのかもしれないな。どうでもいい、と突っぱねられ聞いてもらえなかったけど。
一揆勢がわから見れば裏切者みたいでどうしょうもない卑怯者。けれど、これもまた人間の弱さの一面が表れてますよね。
鶴丸は信綱、右衛門作それぞれと忍んで語り合う。どちらも悲しく嫌な役割を背負わされた人物だし鶴丸自身も嫌われ役を買って出ているからお互いの気持ちを共有、吐き出したかったのかもしれないね。
この後兄弟が歌うんだ。「誰も教えてくれない」
この歌、本当にせつなくて海よりしょっぱい涙が出るよ。
正義と悪の 天国と地獄の その境界線の 見分け方を 教えてください
歌詞の一部なんだけど、これ聞かれて子どもに説明できます?境界線はどこにあるかって話は東京心覚でもやりました。境界線は人の心の中にしかないんだ、ってことを水心子くんは教えてくれたけれど。
皆それぞれの正義感で正しいと思ってやってることが結果的に最悪の事態になったり人を傷つけたり、天国に行けると思って信仰してるのに結果的に地獄のような現実があったり。考えさせられます。
島原の乱で死んでいったものたちはパライソへ行けただろうか?
信綱の策により兵糧攻めにあう一揆勢たち。もう食べるものもなく餓死寸前の人々。
飢え死にそうになってる皆を見てられなくてなんとかしようと断崖絶壁の崖を降りて俺と日向は釣りをすることにしたんだ。
これはあえて鶴丸が釣りに行かせたと言ってもいい。この後皆殺しになることを知っていて、そんな場面を浦島には見せたくないからという優しさからな。
うん・・・釣った魚、皆に食べさせたかったな
最後の最後まで明るく元気に振る舞う浦島と日向。人を斬りすぎたトラウマを克服できるのか松井江。最後まで嫌われ役を演じて気丈にふるまう鶴丸。それをずっとそばで見守り寄り添う豊前江と大俱利伽羅。悲しい結末を男士たちはどういう気持ちで迎えるのか。
配信やDVDでぜひ観て確認してください。
最後に補足。
暗君「松倉勝家」はこの後斬首された。大名級なら切腹で処されるところ、斬首になったのはこの一件だけという。この時代いかに酷い事件だったかを物語る。
一揆勢だったにもかかわらず幕府側に内通していた山田右衛門作。皆殺しになった中彼ひとりだけ生き残ることになる。
島原の乱についてかなり詳しく解説している動画があります。キリスト教がここまで弾圧されることになった背景などについても知れるので良ければご参考に。
【パライソ】作品から受け取る思い|この時代の日本に生まれて良かったこと
島原天草一揆、ただ悲惨ないくさだったな、と終わらせるだけでなく人の命について、戦争について深く深く考えさせられる作品でした。
人は血を流す戦いをやめられないのか
最後に浦島と松井江の会話に考え続けることが俺たちの任務なんだ、と言いますが本当にそう。我々人間は血を流した歴史から学ばなければならない、とあらためて思いました。
何百年、何千年も昔から人は争い斬ったり斬られたりの繰り返し。いまだにそれは終わりそうにないのが残念です。今でも世界のどこかで戦争によって大切な命が落とされている。争いのすべてが宗教に関わるわけではないけれど、宗教が理由で争いに発展した歴史は明らかにくり返し続いています。
信仰ってなんだろう
あらためて考えさせられたこの機会に『沈黙―サイレンス―』という映画も見ました。
2016年のアメリカの歴史映画。遠藤周作の小説『沈黙』が原作。監督はマーティン・スコセッシ。
出演はアンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライヴァー、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、ほか。
どんなに残虐なことをされても改宗することを拒む姿を見て、一体何のためにここまで信仰するんだろう?日本に伝わってきたキリスト教の教えとはどんなだったのだろう?色々考えました。
辛いシーン満載ですが、よりキリシタン弾圧の実態や時代背景を知ることができるはず。
日本人のゆる信仰スタイルって実は最幸(さいこう)?
自分自身もそうですが日本人の多くがどこか特別な宗教に信仰心を持たずに生活してますよね。でも無宗教とも違う。豆まきにひな祭り、七夕祭りや夏祭り、ハロウィンで仮装し、クリスマスにケーキ食べたらお正月には初詣。結婚式は教会で式を挙げ、お葬式は念仏唱えてお墓に入る。
国内旅行に行けばお寺や神社を見るのも楽しいし海外旅行で歴史的価値のある教会を見るのもまた良い。
どんな文化も取り入れて日本人らしくアレンジして楽しい生活の一部にする。神道や仏教の教えや言い伝えが無意識のうちに生活に染みついていてゆるーくなんでも受け入れられる国民になっている。これってとても平和なことではないですか?
ぬるいこと言いますが皆がみんなのことを受け入れられるユルイ気持ちを持てば、天国でも極楽浄土でも行きたいところに行けるのかもしれない。そう思います。
パライソへ行きたいか――?
それでは2部のライブパートを見てそれぞれのパライソへ目指していってらっしゃいませ!
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